明らかになる台風被害…ダムの「緊急放流」に多くの反応

台風19号は12日夜に静岡県の伊豆半島に上陸し、関東から東北を縦断して太平洋に抜けた。

関東甲信や東海、東北の各地では、年間降水量の3～4割にあたる雨がわずか一日、二日で降るという記録的な大雨に。

48時間の雨量は神奈川県箱根町で1001mm、静岡県伊豆市市山で760mm、埼玉県秩父市の浦山で687mmなど、いずれも観測史上1位の記録を更新。

「前例のない」激しい雨により、各地で土砂災害や河川の氾濫、家屋の浸水などが相次ぎ発生。

約730万人に避難指示・勧告が出され、13日正午時点で12人が死亡、少なくとも10人が行方不明。

関東、東北、中部地方を中心に約37万6000戸が停電しているほか、約1万4000戸が断水している。

国土交通省によると、13日午前10時半時点で「氾濫発生情報」が発表された河川は、関東甲信と東北であわせて14に。

長野県上田市の千曲川、東京と神奈川の境を流れる多摩川なども氾濫し、広い範囲で住宅街が浸水して住民が取り残された。

各地のダムでは、記録的な大雨により水位が急上昇し、貯水量の限界に近づいた。

12日夜、長野県伊那市の美和ダム、茨城県常陸太田市の竜神ダム、北茨城市の水沼ダム、神奈川県相模原市の城山ダム、栃木県那須塩原市の塩原ダムで緊急放流を実施。

各自治体は、河川の水位が上昇するおそれがあるとして、流域の住民らに警戒を呼び掛けた。

ダムにおいて、このままでは水位がサーチャージ水位（洪水時にダムが洪水調節をして貯留する際の最高水位）を越えると予想されるときに行われる操作。

ダムへの流入量と同程度の水を放流し、ダムが制御不能に陥るのを防ぐというもの。

ダムが洪水調節をすることを前提に河川が整備されている場合は、水量の増加により堤防の決壊などが起こる可能性はある。

2017年までの10年間の実施例は全国で40回ほどだが、昨年の西日本豪雨では8ダムが同操作に迫られる異常事態に。

愛媛県・肘川の野村ダムと鹿野川ダムでは、安全とされる基準の最大6倍の量を放流し、下流で大規模な浸水被害が発生して死者も出た。

放流直前に自治体は避難指示を出し、サイレン等による警告も行われたが、国土交通省は情報伝達に課題があったことを認め、改善する方針を示していた。

今後も、ダムだけでは防ぎきれない洪水は十分起こりえる。

行政の避難指示やダムの放流警報を十分理解し、異常洪水時にはちゅうちょなく、命を守る行動につなげるように。