欧米では社会問題化…「トコジラミ（南京虫）」に要警戒

朝起きたら腕や脚、体中に無数の丸い虫刺され。

「火の付いたような激しいかゆみが、一日に何度も何度も、荒波のように押し寄せてくる」

世界中の温帯地域に生息する体長5～8mm（幼虫は1～2mm）の吸血性の昆虫。

「シラミ」と命名されているが、分類学的にはセミ、カメムシ、ウンカなどと同じカメムシ目に属する。

ほとんどは主に鳥類やコウモリ類を宿主とするが、トコジラミとネッタイトコジラミの2種は人を吸血源とする。

主に手、足、首などの露出した部分を刺し、刺されると激しいかゆみを伴い、場合によっては発熱を引き起こす。

1960年代までは日本でも一般的に見られたが、衛生状態の改善や殺虫剤の普及によって減少の一途をたどり、1970年代にはほとんど見られなくなった。

しかし、十数年前から再び被害が報告されるようになり、近年は右肩上がりに増加。

東京都内の保健所や市町村に寄せられた南京虫の相談件数は、05年度に26件だったが、18年度には354件と13.6倍になっている。

グローバル化によって多くの外国人が日本を訪れるようになり、荷物や衣服などに紛れて国内へ持ち込まれた可能性が高い。

このほか、海外から輸入される家具やベッドなどにも潜んでいる可能性がある。

90年代以降、欧米を中心に大発生しており、特にアメリカでは社会問題化。

国連本部や高級ホテルなど様々な場所で発見され、映画館や有名ブランドの店舗が駆除のために一時的に閉鎖されることもある。

駆除のために殺虫剤が世界中で広く使われたことで、薬剤に対する抵抗性を身につけた”ニュータイプ”のトコジラミが出現。

薬剤感受性を調べた結果、旧来のトコジラミと比較して1000倍以上の抵抗性を持つタイプもいたという。

夜行性で、畳やベッド・床・壁の隙間など狭く暗い場所に生息するため、発見が非常に難しい。

また、不衛生な環境から発生するわけではなく、清潔にしておけば大丈夫というわけではないため、効果的な予防策はないに等しい。

自宅で発生した場合は、トコジラミが発生・生息している隙間などに対し、スチーマーや掃除機を使用する。

宿泊施設で発見した場合は、自分の荷物や衣類に付着していないか確認し、従業員に知らせて部屋を変えてもらうように。

いずれにしても、市販の殺虫剤が効きにくいため素人が駆除するのは難しく、専門業者に依頼した方がいい。